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  2. クリーンルーム基礎知識

なぜクリーンルームウェア(クリーンスーツ)を着なければならないのか

クリーンルームウェアを着る理由とは?

クリーンルーム内では、粉塵や細菌を最大限に排除することによって空間内の衛生状況や異物の混入を防ぐことができます。
しかし、いくら空間内が清浄された環境でも、そこに入退室する人間が粉塵や異物を持ち込んだり、作業をしながらそうした異物をまき散らすのではクリーンルームの意味がなくなってしまいます。

人間が外部からクリーンルーム内へ持ち込む異物には、たくさんのものがあります。
例えば衣類に付着している糸くずや繊維などもクリーンルーム内では異物という扱いですし、皮膚から落ちる体毛や毛髪などをはじめ、皮膚や汗なども持ち込まれる異物の例として考えられます。
女性の場合には、メイクの粉塵などもあるでしょう。
その他、靴底や服のこすれなどによって発生する塵やホコリなども、クリーンルーム内では御法度です。

クリーンルームウェアとは、クリーンルーム内で作業をすることを想定して開発された特別な衣類で、防塵仕様となっている点が大きな特徴です。
人間から発生する塵やホコリを最小限に抑えながら、外部から汚染された物質もしくは汚染のリスクを持つ物質が入り込むことを最大限に防ぐことができます。

現場に応じて適切なクリーンルームウェアが必須

クリーンルームには、目的に応じて様々なスペックや種類があります。
それに対応して、クリーンルームウェアにも目的や現場の作業環境に適したものが複数あります。
クリーンルームウェアを選ぶ際には、どんな環境でどのような作業をするかに合わせて適したウェアを選ぶ必要があるのです。

クリーンルーム内での作業には、例えば半導体やデジタル系のデバイス製造をはじめ、医薬品や化粧品、食品などを製造することもあります。
さらには病院やクリニックでの手術環境、研究所などの研究施設などもありますし、再生医療のための細胞加工を行う施設などもあります。
そうした目的や作業内容に合わせたクリーンルームウェアを選ぶことは、クリーンルーム内での作業の質を高めると同時に、不良品やスクラップのリスクを最小限に抑えることにもつながります。

例えばクリーンルームウェアの中でも最高レベルのウェアは、人間から発生するすべての異物を遮断できるよう袖や裾の部分は二重構造となっていたり、フルフェイスのマスクで汗や飛沫の混入も防げる仕様となっています。
そこまで徹底した仕様でなくても問題ないクリーンルームウェアなら、クラス100からクラス10,000まで対応可能な清涼ウェアもありますし、作業する人の動作性や通気性を重視したクリーンルームウェアもあります。
基本的にはどの仕様のクリーンルームウェアを着用する際にも、クリーンルームへ入室する前には手指消毒を行ったり、髪はヘアネットの中に収納したり、シューズや手袋、ミドラーなどを着用するなど、細かい部分にも注意が必要となります。

クリーンルームのメンテナンス

空調機の点検と修理

クリーンルームは定期的なメンテナンスが非常に重要です。
というのも、清浄装置が故障していたり、稼働状況が悪かったりしても作業員はその変化に気付くのが難しいからです。
クリーンルームの目的は空気中に汚染物質である微粒子を除去することですが、人間にはその微粒子を見たり感知したりすることができないので、本当にクリーンルームが機能しているかどうかがわからないわけです。

そこで、定期的にメンテナンスをして、すべての装置が正しく機能しているかを知る必要があります。
また、一つの装置でも不具合を起こすとクリーンルーム内の清浄度が下がり、製品の質低下を招きますので、故障する前に必要なケアをしておくべきです。

そのため、空調機は決められた期間ごとに必ず点検をします。
具体的にはガス漏れが生じていないか、ガス圧などをチェックします。
室外機の点検と共に、熱交換器部分に汚れが溜まりがちですので清掃を行う必要もあるでしょう。

空調機によっては消耗品も存在しますので、それぞれのパーツの耐用期間ごとに交換をしていきます。
機器の使用期間が長くなってきたら、早めに交換するかどうかを検討して必要に応じて交換作業を実施します。

フィルター交換のルーティーン

エアフィルターはクリーンルーム関連の装置の中でも特に重要な部分です。
フィルターに目詰まりが起きていたり、破れが生じていたりすると空気循環や清浄化に直接影響するからです。
そのため、クリーンルームで使用されることが多いHEPAフィルターや中性能フィルター、そしてプレフィルターは決められた期間ごとに交換することになっています。

中には、清掃することによって何回か繰り返し利用できる製品もあります。
その場合、メーカーによって決められた清掃方法できれいにします。
ただし半永久的に使えるわけではありませんので、使用回数を超えたらやはり交換する必要があります。

清浄度測定で動作チェック

メンテナンスをする度に清浄度の測定をします。
また、HEPAフィルターを使用しているのであればリークテストも実施します。
通常クリーンルームは、センサーによって常時清浄度のモニタリングがなされています。
しかし、メンテナンスによって装置の動作が変化したり、フィルター交換によって清浄度が変わったりすることがあります。

そもそもメンテナンスが正しく行われクリーンルームが確実に機能しているかはテストをしないと分かりません。
そこで、必ず一定時間稼働させた状態で測定をして、問題のない清浄度を確保できているかを確かめるのです。
場合によっては、メンテナンスの前と後での比較をしたり、通常時との数値変化があるかをチェックしたりすることもあります。

ミニエンバイロメントとは

ミニエンバイロメントとは?

ミニエンバイロメントとは、工場全体を同じ清浄レベルにする、もしくはクリーンルームにするのではなく、製品の周辺や特定の作業スペースのみを高い清浄レベルに保つことです。
具体的には、工場の中の特定のエリアに仕切りをして、そこに排気装置やエアフィルターなどを設置することによって局所的なクリーンルームを作ることが多いです。
工場全体としてはほとんどのスペースで高清浄度化をする必要がない場所で、本当に必要な部分のみを囲って精密部品等の加工や搬送をする際に使われます。

これは局所清浄化技術と呼ばれることもあり、工場内のいくつかのエリアを清浄化レベルによって分けることも可能です。
特に汚染物質を持ち込んではいけないエリアでは、高精度のエアフィルターを設置するなどして部分的に清浄度を上げるものの、他の部分はもう少しクラスを下げるといった使い方をします。
こうすることで、作業目的に合った空間を作ることができ、無駄なコストを削減できるのです。

ミニエンバイロメントを設置するメリット

ミニエンバイロメントを設置するメリットは、まず既存の工場を有効活用できることにあります。
全体をクリーンルーム化するとなると、大規模な改修もしくは工場全体の建て替えが必要となることがあります。
もちろん、工場の全てのエリアで高清浄化しなければいけないのであれば、大規模な修繕も必要となることでしょう。
しかし、クリーンルームを使う作業スペースが小さくても問題ないのであれば、わざわざ工場全体に導入する必要はなく、ミニエンバイロメントの技術を利用するだけで十分です。
こうして既存の工場に大きな手間をかけることなく新しい事業を始められますし、クリーンルーム以外のスペースでは異なる作業ができるなど、敷地の最大活用ができるのです。

そして、コストを削減できるのもメリットです。
より小さなクリーンルームで済みますので、導入するエアフィルターや強制換気装置などを小さなもの、もしくは少量で済みます。
また、稼働させるためのエネルギーコストや、定期的に交換が必要なフィルターの費用なども節約できます。
クリーンルーム維持には初期投資、ランニングコスト双方でそれなりの費用がかかりますので、無駄なく資金を使うためにはミニエンバイロメントが適しています。

作業員の負担が減るのもメリットです。
本来不必要なのに全体をクリーンルーム化してしまうと、別の作業をする作業員もエアーシャワーを浴びたり、クリーンスーツを着用したりと余計な作業を強いられます。
しかしミニエンバイロメントとすれば、そこで作業をする人だけが準備をすれば良いので、負担が軽くなりますし準備に伴う時間を浪費しなくても済みます。

クリーンルーム業務のデメリット

クリーンルーム作業の大変なところ

クリーンルーム内での作業は、通常の環境での仕事とは違う面がたくさんあります。
全体的に言える点は、規則が厳しいところでしょう。
外部から汚染物質を持ち込まないために、入室前にたくさんの準備をしなければなりません。
髪の毛をまとめることや手袋をすること、携行品を置いていくこと、靴を専用のものにすることなどから始まり、エアーシャワーを通って入るなどの手順を踏む必要があります。

こうした準備が面倒で、最初のうちは手順やルールを覚えるのに苦労するかもしれません。
また、専用のクリーンスーツを着用するのも人によっては大変でしょう。
着替えが面倒ということもありますが、動きにくいと感じる人もいますし、汚れたら交換しなければいけないといった規則もあります。

クリーンルームで行われる作業そのものが大変と思うこともあるでしょう。
人員配置の関係から、決められた時間までに決められた工程をすべて完了することが求められます。
仕事に慣れるまできついこともあるでしょうし、ノルマを終えるまでは残業となることも珍しくありません。

そして、こうした工場作業はほとんどの工程で単純作業の繰り返しです。
飽きてしまいますし、同じ動きしかしないので体が痛くなることもあります。
また、チームでの流れ作業をする関係で、一人が抜けると流れがストップしてしまうためトイレに行きづらいという事情もあります。

クリーンルームに向いてない人とは?

クリーンルームの作業が向いていない人としては、単調な作業を黙々とするのが耐えられないという人が挙げられます。
集中力が持たないとか、しばらくすると仕事が嫌になってしまうようだとクリーンルーム作業は続けられません。
また、ルールに縛られるのが面倒であるとか、細かな手順を踏んで行くのが疲れるという人も向いていません。
毎回決まった手順を踏んで行かないと、そもそもクリーンルームの中にすら入れませんので、仕事をしていくのは難しいです。

他にも、体を動かして体力を使う仕事がしたいと感じているのであれば、クリーンルーム作業は向いていません。
もちろん作業自体は体を動かすのですが、手元だけを動かすことがほとんどで、しかも小さな動きをひたすら繰り返すだけです。
そのため同じ姿勢をしていると腰が痛くなるとか、足がむくんできついという人は厳しい作業条件となります。

メリット・デメリットを比較して仕事を選ぼう

クリーンルーム業務は大量に募集がかかることもありますし、未経験でも採用されやすいなどのメリットがあります。
また、工場によっては高い時給がもらえるものです。
こうしたメリットもありますので、上記のようなデメリットと比較して、自分に合った仕事なのかを考えて決めましょう。

クリーン度と換気回数の違い

クリーン度とは?

クリーンルーム内の清浄度は常にモニタリングして、一定基準以上に保っておく必要があります。
そのためには明確な指標が必要となり、この指標がクリーン度と呼ばれるものです。
クリーン度はいくつかの規格があり、現場によって採用している規格が異なるケースがあるので注意が必要です。

日本で以前からよく使われているのが「FED規格」と呼ばれるものです。
これは、クラスを1、10、100と桁数で表示するもので、1立法フィート当たりの空間にどれだけの粒子があるかという基準で数値化しています。

粒子は直径0.5μm以上のものをカウントすることになっていて、最高レベルのクラス1では、粒子数は1個以下です。
クラス10では粒子数は10個、クラス100では100異なっていて、クラスカテゴリーがそのまま粒子数で表示されます。
このFED規格は業界で広く慣習として使われてきたものですので、設置業者などもこの規格に基づいて説明をすることが多いです。

もう一つの企画は「ISO規格」です。
正式には「ISO-14644-1」というもので、世界中で統一されている規格となっています。
この規格は、微粒子の大きさと数によってレベルを分けているのが特徴です。
たとら、0.1μm以下の粒子が10個以下であればISO1の最高レベルとなります。

0.2μmの粒子の場合は、2個以下であればISO1をクリアします。
0.1μm粒子が100以下となるとISO2になり、0.5μm粒子が4個以下でもISO2となります。
このように、FED規格と違い粒子の大きさも関係してくるので、より細かな判定ができるのがメリットです。

クリーン度に応じて換気回数が変わってくる

どちらの基準であっても、それぞれのクラスによって換気回数を見極めるのがクラス判定をする目的です。
たとえばFED規格では、クラス100のクリーンルームでは1時間あたり250回から400回の換気が必要となります。
クラス100は、液晶や半導体製造工場などが該当する清浄レベルです。
クラス1,000は病院の手術室が該当しますが、換気回数は1時間当たり150程度となっています。
このように、求める清浄クラスを把握し規格を当てはめると、必要な換気回数が簡単に割り出せるというわけです。

そして、換気回数を割り出したら、クリーンルームの容積や必要な空気の量などを計算することができます。
それにより最終的に必要な風量が見えてきますので、空調機器のスペックを比較して最適な機器を選定できるのです。
ただし、内部における作業の内容やドアの開閉頻度などによっても求められる清浄機能が異なることもありますので、総合的に考えて判断することが重要です。

クリーンルームの代表的な空調方式

オールフレッシュ式のクリーンルームの特徴

一口にクリーンルームと言っても、それぞれに空調方式や換気方式が異なります。
代表的な換気方式としてはオールフレッシュ式というものがあります。
これは新鮮な空気をすべて取り入れた後に、温度や湿度を調整し洗浄してから室内に送り込むという方式です。
もともと室内に循環していた汚染されている空気は、そのまま外に排気することになります。
そのため、室内の空気を洗浄したり空調したりすることはなく、完全に空気が入れ替わるのが特徴です。

室内の空気の汚染度が高い環境や、常に高い洗浄レベルを維持していなければならない現場で使われることが多いのがオールフレッシュ式です。
具体的には病院の手術室はフレッシュな空気を必要とするため、オールフレッシュ式が採用されるケースが多いです。
また、温度や湿度の管理がしやすいので、室内環境を一定に保ちやすいというメリットもあります。

他の特徴としては、内部で化学薬品や有機溶剤を使っている現場で使用される傾向があります。
空調機器の特性上、装置を劣化させる化学物質を使っていると、汚染された空気を再利用する方式だと機器が破損する恐れがあります。
しかし、オールフレッシュ方式だと汚染された空気を排出するだけなので問題なく利用できるのです。
また、換気の効率が良いので人の出入りが多いとか、ドアの開閉が多いシーンであっても清浄度を保ちやすく復元性が良いというのもメリットです。

一方で、機器の導入費用が高くなります。
また、より多くのエネルギーを消費するためランニングコストが上がる傾向も見られます。
そのため、経済性に劣ることからより重要度の高いクリーンルームにのみ採用されることが多いです。

循環式の空調について

循環式は、一定程度外部のフレッシュな空気を取り入れることはありますが、内部の空気を使って室内環境を維持する方式です。
内部の空気を一度取り入れ、それを清浄化させ、温度と湿度の調整をした上で再び室内に戻すことになります。
オールフレッシュ方式ではすべて外部の空気でしたが、循環式では内部の空気を使うという点で違いがあります。

この循環式は経済性に優れるのが大きなメリットです。
装置導入コストが安く付きますし、外部の空気の取入れや室内空気の全排出をしないため、ランニングコストも下がる傾向にあります。
また、室内で製造作業によって粉塵が発生しないのであれば、それほどエアフィルターの交換をする必要がなく、メンテナンスが楽になるというのメリットです。

一方で、室内の空気をいわば再利用するという構造上、室内で有機溶剤などの化学薬品を使用する環境では利用できません。
また、ドアの開閉が多いところでは、復元性があまり良くなく清浄度を保ちづらいケースも見られます。

給排気システムについて

一方向流方式クリーンルームとは?

一方向流方式クリーンルームとは、部屋全体で気流が一定の方向に流れるクリーンルームのことを指します。
気流を一定方向に維持するためには、天井全体および壁一面に高性能のフィルタを配置する必要がありますが、その際にはHEPAフィルタやULPAフィルタなどが多く採用されます。

一方向流方式クリーンルームにおいては、コンタミナントは気流に押されて室外へ排出されるという特徴があります。
作業を行う室内にコンタミナントが滞留・蓄積しづらいという点がこのクリーンルームの特徴です。

一方向流方式クリーンルームでは、換気の回数は1時間当たらい200回~300回以上が必要となります。
しかし、清浄度が5以上という高いレベルで清浄空間を形成できるという点がメリットです。

このタイプのクリーンルームでは、イニシャルコストおよびランニングコストが非一方向流方式クリーンルームと比べて割高となる点が挙げられます。
またクリーンゾーンを拡張したり、配置換えや移動をする事は構造上難しくなってしまいます。

非一方向流方式クリーンルームとは?

非一方向流方式クリーンルームとは、クリーンルームの給排気システムの点で一方向流方式クリーンルームと比較されるタイプのクリーンルームです。
このタイプは、室内の壁面や天井の全面ではなく一部に高性能のフィルタを設置するとともに、別の部分には排気口として機能するダクトを設置します。
清浄な空気を室内に供給するとともに、室内で発生したコンタミナントをできるだけ希釈した状態で輩出しようというのが非一方向流方式クリーンルームのメカニズムです。

非一方向流方式クリーンルームは、一方向流方式クリーンルームと比較すると清浄度は若干低くなるというデメリットがあります。
実現可能な清浄度は、クラス6~8程度です。
ただし、初期費用やランニングコストを抑えられるというメリットがあるためコスト重視でクリーンルームを設置したい際にはおすすめです。

ただし非一方向流方式クリーンルームは、清浄な空気が噴き出す部分と噴出さない部分とがあるため室内の清浄度は均一ではありません。
そのため、ところどころに気流が発生しやすい傾向があります。

気流が発生すると、そこに乗ったゴミや異物などの粒子が製品汚染のリスクにつながってしまう可能性があります。
非一方向流方式クリーンルームを設置する際には、製品汚染のリスクに対しては、さまざまな対策を講じることが必要です。
給排気システムの構造によって分類できる一方向流方式・非一方向流方式クリーンルームですが、クリーンルームは他にも分類方法がいくつかあり、目的や用途、リスク管理によって分類できます。

PDR(パーティクル デポレーション レート)とは

PDRって何?

PDR(パーティクル・デポジション・レート)とは、1㎡の面積に1時間でどのくらいの数の粒子が堆積するかを数値化した指標です。
これは、「PDR=個数÷8(面積x時間)」によって計算することができます。

PDRには、時間という概念が含まれています。
それによって、実際にその空間で作業をした際に製品にどのぐらいの異物やゴミが付着するのかという点のリスク管理がしやすくなります。

PDRは、2021年に新しく制定されたクリーンルームの規格ISO147644-17の登場によって注目されました。
このISO147644-17指標では、表面の清浄度を、モノの表面にどのぐらいの異物やゴミが付着するかをSCPクラスと呼ばれる数値で示すという特徴があります。
しかし表面の清浄度だけでは、粒子汚染のリスク管理においては十分ではありません。
そこで、このISO147644-17の中に時間という概念を組み込みPDRが作られました。

PDRでは、PDRL(パーティクル・デポジション・レート・レベル)が用いられます。
これは一言で言えば空中からどのぐらいの異物やごみが落ちてくるかを数値化したもので、5μm~500μmの範囲で表示されます。
異物やゴミ粒子の大きさはPDRと比例関係にあるため、PDRLにも返還することができます。

PDRを使ったリスク計算はどのようにする?

PDRは、作業中に空中の異物やゴミが落ちてくることによって製品が不良となってしまうリスクを数値として評価する際に使われる指標です。
このISO規格では、10μm以上の粗大粒子は、50%以上が表面に堆積し、40μmを超えると90%以上が表面に滞積するという考えに基づいています。
そして終端速度に基づいて計算すると、2mの高さから10μmのゴミが床に落下するまでにかかる時間は11分ですが、粒子が大きな100μmとなると、かかる時間はわずか8秒ということが分かります。

このPDRを使うことによって、リスク計算ができる他、リスクを低減するための対策方法も講じることができます。
最もリスクが高いエリアを把握しながら、製品不良となる最小粒子のサイズが分かれば入室制限や動作規制をかけることができますし、作業手順や行動規制をかけることも可能です。
また作業銅線や物流を最適化することによって、リスクを低減することもできるでしょう。

またPDRは、粒子の気中濃度とも関係があります。
一般的には、作業手順を改善してもPDRが下がらない際にはクリーンルームのアップデートが必要となります。
その際にも必要な気中濃度をPDRを使って計算することで、どのぐらいのISOクラスが必要かが分かります。

清浄度クラスとは

清浄度クラスとは?

クリーンルームには、多種多様な清浄度クラスがあります。
クリーンルームは一般的に空気中の微粒子が少ない空間ですが、その中でもどのぐらい微粒子が少ないのかという点を数値化したものが清浄度の規格です。
清浄度の規格には、ISOやJISなどいくつかの種類がありますが、現在国際統一規格となっているのはISOです。

ISO規格はClass1~9で清浄度を分類

清浄度を示すISO規格では、1㎥当たりの空気中にどのぐらいの数の粒子があるかという点で、Class1から9まで9段階での分類をしています。
しかし業界においては1㎥当たりではなく、アメリカ規格となっている1立方フィート当たりの粒子数をカウントすることが多いです。
カウントの対象となるのは、0.5μm以上の大きさを持つ粒子です。

対象となる粒子の数をカウントし、1立方フィート当たりに100子以下の場合にはクラス5となります。
清浄度クラスの呼び方は、クラス5と呼ぶこともあれば、粒子数に合わせてクラス100と呼ぶこともあります。

清浄度が最も高いクラス1およびクラス2では、0.5μm以上のサイズを持つ粒子は0個でなければいけません。
この場合、粒子のサイズが0.5μmよりも小さなものの数をカウントし、0.1μmが10個以下、0.2μmのものが2個以下なら最高レベルの清浄度となるクラス1に分類されます。
クラス2では、0.1μmのものは100個以下、0.2μmのものは24個以下、0.3μmのものは10個以下、そして0.5μm以下のものは4個以下の場合に分類されます。

ISO規格における分類の中でも、最も清浄度が低いとされるクラス9では0.5μm以上のサイズを持つ粒子のカウントは行われません。
その代わりに、1.0μm以下のサイズのものは832万個以下、5.0μmのものなら29.3万個以下ならクラス9に該当します。

清浄レベルは数字が小さいほうがベター

ISO規格による清浄レベルは、クラス1~9でも、粒子の数によって示すクラス1やクラス1,000の場合でも、数字は少ない方が高い清浄レベルとなります。
各業界や分野において、どのぐらい高い清浄レベルが必要かという点は異なります。
最も高い清浄レベルを必要とするのは半導体工場で、クラス1~100が必要です。

クラス100~10,000の清浄レベルが求められるのは電子部品工場や光学機械工場、また精密工場などです。
また、薬品工場や食品工場でも、虫対策としての清浄レベルが必要で、クラス100~クラス10万が適用範囲となります。
クリーンルームは必要だけれどクラス1,000~10万レベルでOKなのは、印刷工場や自動車部品工場、また花粉症対策や医療機関の手術室などが該当します。

クリーンルームで働く際に知っておくべきこと

クリーンルームでの仕事はどのような内容なのか

クリーンルームで働くときには、まずは「クリーンスーツ」という専用の服に着替える必要があります。
クリーンスーツは特殊な素材でできている白い色の服で、毛羽立たず、ほこりが付きにくい仕様になっています。
これにより空気中のほこりや微粒子などが服につかず、室内に不純物を持ち込みにくくすることができます。

クリーンスーツに着替えたら、「エアシャワー」というものを浴びます。
エアシャワーとは、「空気の圧力で服に付いているほこりや粒子を取り除くシャワー」のことです。

クリーンスーツで入室するときにほこりなどを持ち込んでしまうと、それが製品に異常を引き起こすことがあります。
そのためエアシャワーでクリーン服をきれいにしてから、部屋へ入る必要があります。

こうして入室したら、指示されている作業を行います。
仕事内容は企業によって異なり、部品の洗浄や組み立て、完成した製品の検査などが行われます。

クリーンルームで働くことのメリット

クリーンルームで働くことには、さまざまなメリットがあります。
まずは「専門知識や技術が身に付く」という点が挙げられます。

クリーンルームで行う作業は専門性の高い内容が多く、誰でもできる仕事ではありません。
また、単純に決められたことを行うだけでなく、技術の知識を下に検査結果などを検証する必要もあります。

ときには膨大な数のデータから結果を導き出すこともあるため、仕事によっては高いレベルの専門性が求められます。
ただ、その分だけやりがいも大きく、自分の経験やスキルも高めることができます。

また、クリーンルームでの仕事は、「座って作業できる」というところもメリットです。
基本的に作業は座りながら安定した場所で行うため、楽な体勢で働くことができます。
職場によっては立ち仕事だったり、体力が必要だったりすることがあります。
これに対してクリーンルームは比較的働きやすいため、男性だけでなく女性にも人気の仕事です。

クリーンルームでの仕事に向いている人

クリーンルームで働くのに向いている人は、まずは「コツコツと作業できる人」です。
担当する仕事は細かい作業を何度も繰り返すことが多く、人によっては集中力が切れてしまったり途中でミスをしたりしてしまうことがあります。
そのため集中力を保って細かい作業ができる人には、この仕事は向いていると言えるでしょう。

次に、「考えて働ける人」にも向いています。
クリーンルームでの仕事は単純作業的な業務もありますが、考える必要があることも多いです。
いつもさまざまな角度から考えることができる人は、この仕事は向いています。

このようにグリーンルームの仕事は、さまざまな特徴があります。
自分に合っているかを確認して、仕事を始めるかどうかを決めることをおすすめします。