クリーンルームは、微細な粒子や異物を徹底的に排除するために設計された特別な空間です。
半導体、医薬品、食品、精密機器など、清浄度が求められる分野で使われていますが、その環境を維持するためには「持ち込んではいけない物」を明確に定めることが必要です。

普段は何気なく使っているものでも、クリーンルームに持ち込むとトラブルの原因になることがあります。
ここでは、代表的に持ち込み禁止とされる物と、その理由をわかりやすく紹介します。

持ち込み禁止になる物とその理由

まずは、実際にクリーンルームで禁止されていることが多い物を見ていきましょう。

1. 紙類(普通のコピー用紙、ノートなど)
紙は摩擦で細かい繊維が発生しやすく、目に見えないレベルの粉じんが大量に出てしまいます。
そのため、クリーンルーム内では通常の紙は使えず、代わりに「クリーンペーパー」と呼ばれる専用の低発塵紙が用いられます。

2. 筆記用具(鉛筆や消しゴム、一般的なボールペンなど)
鉛筆は芯の粉が飛び散りやすく、消しゴムは消しかすが発生します。
また一般的なペンは樹脂やインクの成分が微粒子を出す可能性があるため、専用のクリーンルーム用ペンが推奨されます。

3. 衣類(毛織物や私服のままの着用)
ウールやコットンなどの繊維素材は毛羽立ちやすく、微細なほこりが出やすいです。
そのため、クリーンルームでは専用のクリーンスーツ、手袋、ブーツ、マスクを着用することが義務づけられています。

4. 化粧品や香水
パウダータイプの化粧品や香料は揮発性の成分を含み、空気中に粒子や分子を放出してしまいます。
これが製品に付着すると品質不良の原因となるため、基本的にメイクは制限される場合が多いです。

5. 食べ物・飲み物
食品はカスや水分を飛散させるため、持ち込みは厳禁です。
また飲み物の容器も破損や結露によって異物の原因となるため、クリーンルーム外での管理が原則です。

6. 革製品や木製品
これらの素材は劣化や摩耗によって細かい粉が発生します。
例えば革のベルトや木製のクリップボードは小さな粒子をまき散らすため、クリーンルームには不向きです。

7. 静電気を帯びやすいプラスチック製品
静電気を帯びやすいものはほこりを引き寄せやすく、清浄度を乱す原因になります。
導電性や帯電防止加工がされた専用ツールが必要です。

このように、日常生活では気にならない物でも、クリーンルームでは大敵となるケースが多いのです。

クリーンルームで使える代替品と工夫

禁止されている物が多いと「仕事に必要な物まで持ち込めないのでは?」と不安になりますが、クリーンルームには代替品や専用の工夫が整っています。

・専用文房具
普通の紙やペンの代わりに、低発塵紙や帯電防止仕様のペンを使用します。
これにより、メモを取る作業も問題なく行えます。

・クリーンルーム用の備品
トレイや工具、容器なども帯電防止加工や低発塵素材で作られています。
作業のしやすさは通常と変わらず、異物発生を防げます。

・ロッカーや前室の活用
私物はすべて前室のロッカーに預け、必要最低限のものだけをクリーンルームに持ち込む運用が一般的です。
これにより「うっかり持ち込んでしまう」ことを防ぎます。

・教育とチェック体制
新人教育や入室前のチェックで、持ち込み禁止物が徹底されています。
個人の判断に任せるのではなく、ルールとして仕組みに組み込むことが清浄度維持には欠かせません。

クリーンルームで持ち込み禁止とされる物は、ほこりや粒子、静電気、化学成分など、環境を乱す要因を生む物ばかりです。
「紙」「衣類」「化粧品」「食品」「一般的な文房具」など、日常的には当たり前の物でも、クリーンルームではトラブルの原因になり得ます。

そのため、代替品や専用備品が用意され、ルールと教育で徹底管理されています。
クリーンルームで働く際には「なぜこの物が禁止されているのか」という背景を理解しておくことが、製品の品質を守る第一歩となります。