クリーンルームでは、髪の毛やフケといった人由来の異物が大きなリスク要因になります。
食品や医薬品のように「目に見える異物混入」が致命的な事故につながる現場ではもちろん、半導体や精密機器のように「微細な異物でも不良の原因になる」分野でも、髪の毛対策は欠かせません。

ここでは、クリーンルームでの髪の毛対策の基本と、実際に使われるヘアキャップやインナーキャップの役割について解説します。

なぜ髪の毛はクリーンルームにとって危険なのか

人間の体から発生する異物の中で、髪の毛は特にコントロールが難しい存在です。
1本の長い髪が落下するだけでも、食品や医薬品の品質トラブルに直結します。消費者からのクレームにつながるのはもちろん、リコール対応やブランドイメージ低下という大きな損失を生む可能性もあります。

また、髪の毛自体に付着した皮脂やフケ、ホコリも問題です。髪が動くたびに静電気で細かな粒子が舞い、クリーン度の維持を妨げます。特に半導体や精密電子部品の現場では、髪の毛が1本でも製品の不良率を高めることがあるため、徹底した管理が求められています。

さらに、髪は人によって長さや量が異なるため「個人差が大きい異物源」という特徴もあります。短髪の人より長髪の人、パーマやカラーで髪の毛が傷んでいる人ほど、抜け毛やフケの発生が増える傾向があります。このため、全員が同じ基準で対策を行うことが重要です。

ヘアキャップとインナーキャップの役割

クリーンルームで最も一般的な髪の毛対策が、ヘアキャップとインナーキャップの併用です。

まずヘアキャップは、頭部全体を覆って髪の毛の落下を防ぐ役割があります。一般的な不織布製キャップやネットキャップは軽量で通気性があり、長時間装着しても快適です。ただし、耳や首まわりに髪が残っていると完全に封じ込められないため、装着の仕方に注意が必要です。

そこで補助的に使われるのがインナーキャップです。これは頭皮にぴったりと密着し、髪の毛を内側にまとめて固定するものです。インナーキャップで髪をまとめた上からヘアキャップを装着することで、隙間から髪がはみ出すリスクを大幅に減らせます。特に長髪の方や、髪の毛の量が多い人には必須のアイテムといえます。

さらに厳しい清浄度クラスの現場では、フード型のクリーンスーツと組み合わせて、頭部全体を二重三重にカバーするケースもあります。この場合は「髪が1本も外に出ないこと」が徹底されており、作業者同士で装着状態を確認し合う仕組みが導入されていることも少なくありません。

髪の毛対策は「キャップをかぶれば終わり」ではなく、正しい装着手順を守ることがポイントです。前髪やこめかみの髪が残っていないか、耳に髪がかかっていないかを鏡で確認する、入室前に他の作業者とチェックし合う、といった習慣が重要になります。