クリーンルームは、空気中の微粒子や異物をできる限り排除して、製品や研究の品質を守る特別な環境です。
その清浄な環境を維持するうえで重要な役割を果たしている設備のひとつが「エアシャワー」です。

エアシャワーは、クリーンルームに入室する前に設置される設備で、作業者や持ち込み物の表面に付着した微粒子を強力な気流で吹き飛ばす機能を持っています。
ここでは、エアシャワーの基本的な役割と正しい使い方について解説します。

エアシャワーの役割とは

エアシャワーの最大の目的は、クリーンルーム内への異物の持ち込みを防ぐことです。
人や物は必ず微細なほこりや繊維をまとっており、それがそのままクリーンルームに持ち込まれると清浄度が下がり、製品不良や研究データの信頼性低下につながります。
具体的には以下のような役割があります。

1. 作業者からの発塵防止
人は歩くだけでも皮膚片や髪の毛、衣服の繊維を放出しています。
クリーンスーツを着用していても、完全に防ぐことはできません。
エアシャワーは高圧のクリーンエアを全身に吹き付けることで、衣服表面に残った微粒子を取り除き、持ち込みリスクを減らします。

2. 搬入物の清浄化
機材や資材をクリーンルームに持ち込む際にもエアシャワーが活用されます。
梱包材の表面や運搬時に付着したほこりを除去することで、異物の侵入を最小限に抑えられます。

3. 清浄度の維持
エアシャワーは単なる通過設備ではなく、清浄度を守る「最終関門」としての役割があります。
もしこのステップを省いてしまうと、どれだけ高度な空調やフィルターを備えていても、清浄度の低下は避けられません。

このように、エアシャワーは「クリーンルームの入口を守る門番」といえる存在なのです。

エアシャワーの正しい使い方

エアシャワーはただ入ればいいというものではありません。
正しい手順で利用することが、十分な効果を得るために重要です。

1. 入室前の準備を整える
クリーンスーツ、マスク、手袋、ブーツなどを正しく着用してからエアシャワーに入ります。
服装が整っていなければ、せっかくの気流で異物を吹き飛ばしても、再び汚染源が持ち込まれてしまいます。

2. 両腕を広げてゆっくり回転する
エアシャワー内では数十秒間、強い気流が全身に吹き付けられます。
このとき、腕を軽く広げて体をゆっくり回転させると、全身の隅々に風が当たりやすくなります。
動きを止めてしまうと気流が一部にしか当たらず、除去効果が下がるので注意が必要です。

3. 扉が開くまで待つ
エアシャワーは一定時間の送風が終わるまで次の扉が開かない仕組みになっています。
途中で無理に出ようとせず、送風が止まるのを待ってからクリーンルームに入室します。

4. 荷物も同じように清浄化する
資材や工具を持ち込む場合も、エアシャワーを通して異物を取り除きます。
大きな機材には専用の大型エアシャワーやエアブロー装置が用意されているケースもあります。

これらの手順を徹底することで、エアシャワーの効果は最大限に発揮されます。
エアシャワーは、クリーンルームの清浄度を守るための重要な設備です。
作業者や搬入物に付着した微粒子を除去し、室内環境を汚染から守る役割を担っています。
正しい使い方を理解し、日常の入室手順として徹底することが、クリーンルームの運用品質を高めるカギとなります。